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Past Exhibition

トミオ・セイケ写真展「Eighteen month」
2009/9/16-11/14

inf_press_42_image1.jpg(C)Tomio Seike 禁無断転載

欧米のアート写真シーンで活躍中の写真家トミオ・セイケの新作写真展「Eighteen month」です。

2007年の秋、セイケは英国人の友人から、英国南東部サセックス州にある築400年以上のコテージを購入するので見に来ないかと誘われます。早々に訪問すると、その古い民家はまだ前オーナーが住んでいたままの状態で数ヶ月のうちに友人が引っ越しを済ませる予定とのことでした。セイケは室内に入ると直ぐにこれまでに感じたことのないような緊張感と、ある種の重さをまわりの空気から全身に感じたということです。それは家の中の何処にでもついてくるような不思議な緊迫感だったとも言っています。前オーナーは60歳代の女性で終の住処にこのコテージを購入したのですが、病に冒され僅か18ヶ月後この世を去ってしまったということです。

セイケが見た家の内部はまさに前オーナーが亡くなったままの状態だったのです。彼女は、自分が愛するアンティーク・ドールを多くの部屋に置いており、地元ではドールハウスと呼ばれていたそうです。わずか18か月しか住めなかった家の中には彼女の気持ちが消えずに残っていたのでしょう。その思いが、感性豊かな写真家の心に伝わったのだと思います。たとえどんな人が移り住んでも、“いま感じるものは総て消えてしまう”というセイケの思いが、限られた時間の中での撮影を決心させました。本作は、2007年秋から2008年春にかけて撮影された、イングランド古民家の一種のドキュメントです。400年以上の歴史の上に僅か18ヶ月住んだ女性の思いも堆積しています。セイケはこの古民家に刻まれた時間を彼女の視点から撮影しようと試みたのです。光と影が交錯する濃厚なモノクロームで表現された作品は、彼の代表作「Paris」や、「Glynde Forge」を思い起こさせます。

ラテン語で「メメント・モリ」という言葉があります。これは、「自分がいつか死ぬことも忘れるな」と訳されます。人間は忙しい日々を暮らしていると毎日が永遠に続くような錯覚を持ちます。それが生きる苦しみや悩みの原因となります。自分の死を意識できれば、日々の悩み事にとらわれることなく逆に今この瞬間を一生懸命に生きることが重要だと気付くのです。本作はそんな人間の当り前の運命に改めて気付くきっかけを与えてくれるとともに、幸せは過去、未来ではなく現在にあることも教えてくれるのです。

トミオ・セイケは作品がグローバル市場で高い評価を受けている数少ない日本人写真家です。またライカ・カメラのマスターと呼ばれ、今秋にはドイツ・ソルムスのライカ本社ギャラリーで個展開催も予定されています。

本展では、デジタル・アーカイバル・プリント(*)で制作されたモノクロ作品約22点(各エディション15点)が展示されます。

* デジタル・アーカイバル・プリント
写真家、専門家による厳しい管理下で、使用インク(顔料系)や無酸紙にこだわり、高品位インクジェット・プリンターで制作されるデジタルプリントのことです。銀塩写真なみの耐久性があると言われています。

トミオ・セイケ・プロフィール

トミオ・セイケ(清家冨夫)は1943年東京生まれ。欧米の主要アート・ギャラリーのハミルトンズ(ロンドン)などと契約し写真展を定期的に開催している数少ない日本人作家です。
会社員を3年経験後、1970年に日本写真学園を卒業しています。アシスタントを経験後、1975年からフリーランス写真家、その後イギリスに渡り1987年以降は東京とブライトンに居を構えています。現在は写真展、写真集を通しての作家活動のみを行い、商業写真は行っていません。
1982~1987年に取り組んだ「ZOE」シリーズで作家として注目されます。ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーで初公開されて以降、ハミルトンズ(ロンドン)、ウェストン・ギャラリー(カーメル)、ツァイト・フォトサロン(日本橋)、コウジ・オグラ・ギャラリー(名古屋)、ギャラリーf5.6(ミュンヘン)など世界中で個展が開催されています。
その後、「Paris」1992年、「Waterscapes」2003年、「Glynde Forge」2006年、を相次いで発表し作家の地位を確立させます。欧米写真の伝統を踏まえた上に日本文化のエッセンスも感じさせる優れた作家性、卓越した撮影テクニック、自らがプリントする高い完成度の銀塩写真で世界中のコレクターを魅了し続けています。またほとんどの作品がライカで撮影されていることからカメラファンからも熱烈な支持を得ています。
作品は、ヒューストン美術館、サンタバーバラ美術館、ヨーロッパ写真美術館、フランス国立図書館、ラザール・ナショナルバンク、エルトン・ジョン・コレクション、エルメス財団パーマネントコレクション等に収蔵されています。