Blitz Gallery updated 2017-08-30

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"Roppongi, 2005" (C)Alao Yokogi

横木安良夫 写真展
「Glance of lens 2011」
- レ ン ズ の 一 瞥 -
2011年 3月4日(金)~ 4月16日(土)
1:00PM~7:00PM/ 休廊 日・月曜日 / 入場無料 

僕は街を歩く。クルマに乗り、地下鉄に揺られる。飛行機で移動する。そしていつのまにか未知の土地を歩いている。突然「彼」が耳の奥で囁いた。「シャッターを切れ」と。そこにはありふれた風景が広がっている。決して特別な場所なんかじゃない。レンズの前を通り過ぎる人々もごく普通だ。逡巡していると「眺めてないで早く撮れ」と彼は命令する。僕はカメラを構える。頭のなかは空っぽだ。「なぜこれを撮るんだ」と自問する。そこで「彼」は答える。「撮ればいいんだよ。わからないんだろう。だから撮るのさ」
もはや「彼」の指令に従うしかない。それは潜在意識?その時、その場所で、言葉にならない「衝動」こそが主題なのか。カメラによって世界は断片に切り刻まれてゆく。その一片一片は僕の知らない場所で無限に増殖する。そして再び僕の網膜に飛び込んでくる。それこそが真実の世界?   

横木安良夫

ブリッツ・ギャラリーは、現在コマーシャル、エディトリアル写真および映像分野で活躍する横木安良夫(よこぎ・あらお)の写真展「Glance of lens 2011」を開催します。当ギャラリーでは「ティーチ・ユア・チルドレン/Photographs 1967-1975」以来5年ぶりの個展になります。横木は70~90年代に商業写真家として活躍し、90年代以降に作家活動を再開。ライフワークとして取り組んでいるのが、「Glance of lens」シリーズです。本展には、過去20年に撮影されたモノクロ・カラーの代表作、未発表作約20点がセレクション。ほとんどが100 X 70cmの大判プリントによる展示です。

いまのアート界では現代美術が市場を席巻し、写真表現もその影響を多大に受けています。そこではアイデアやコンセプトが重要視されます。しかし、上記文章のように、横木はそれらを生み出している自己概念そのものの存在を疑うのです。自己が様々な判断を下しているのではないかもしれない。自分があるという感覚は、脳の中にある心的モデルかもしれないということです。実は、これと似たような考えは、多くの心理学、哲学、生物、宗教などの専門家が様々な文脈で語っていることでもあります。過去や未来ではなく、いまに生きるという禅の思想にも通じます。

実は人間の生きる苦しみは自分がこうありたいという思いが原因なのです。悩む自己が存在しないならば、何物にもとらわれずに真に精神的に自由になれるのです。自分がいなくても起きるべきことは、ただ起きるのです。これは真の創造性はアイデアやコンセプトのない時に生まれるのではないかという問いかけでもあります。では横木の写真はあまたある感覚重視の写真とどう違うのでしょうか? それは、彼には自分の“優れたセンス”を生かして撮影するというエゴがない点なのです。まるで禅問答のようですが、「Glance of lens」は作品コンセプトがないこと自体をコンセプトとしているのです。横木の「レンズの一瞥」は頭でっかちで感覚重視になったアートへの一撃でもあるのです。
本展が、現代のアートと写真の本質を考える新たなきっかけになれば幸いです。

横木安良夫プロフィール