Blitz Gallery updated 2017-10-30

Past Exhibition

inf_press_49_image1.jpg
宮城県石巻市, 2007 (C)Naoki Shimomoto



東日本大震災チャリティ写真展
「取り残された記憶」
下元 直樹 写真展

2011年 5月12日(木)~ 6月25日(土)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 日・月曜日 / 入場無料
*停電などの影響で、日程・営業時間が変更となる場合があります。

下元直樹は宮城県仙台出身の写真家です。「取り残された記憶」シリーズは、宮城県の亘理町、気仙沼市、石巻市、女川町、岩手県の宮古市、釜石市、大船渡市、福島県の相馬市、青森県の八戸市、山形県河北町などで2004年から2009年にかけて撮影されました。多くの撮影場所は今回の東日本大震災による大津波で壊滅的な被害にあった地域です。彼が撮影した海沿いの漁村のシーンはもはや残っていないところも多いと思われます。

下元は、東北の海沿いに点在する寂れた漁村などに残る、住宅、店舗、倉庫、工場跡の朽ち果て、錆びた壁面をクローズアップと巧みなフレーミングで撮影してきました。古びた壁面などを精緻に撮影する写真家は数多くいます。しかし撮影コンセプトが明快に提示されないと、カメラとプリントのクオリティーだけを追求した一種の壁紙みたいな作品に陥ってしまいます。下元の視点は明確です。彼は東北出身である自身のアイデンティティーと重ね合わせて、若者が街を去り、人口が減少し、経済が疲弊した地方部に注目。「取り残された記憶」は、日本の経済成長の陰の部分にフォーカスしたドキュメントなのです。一方でグリッド状に展示されるタイポロジー的作品は、グラフィカルにきれいな上、カラフルでポップな色彩は魅力的。彼は寂れた漁村のドキュメントの中でイメージ自体の美しさを見出しています。そのネガティブな状況の中にポジティブな面を引き出すアプローチは日本の侘び寂びの精神性にも通じると思います。

また写真史的には、都市の壁の落書きや汚れをクローズアップと見事なフレーミングで抽象絵画のように撮影した米国人写真家アーロン・シスキン(1903-1991)のカラー版のようにも感じられます。

「取り残された記憶」シリーズは全てインクジェットにより制作されています。採用している「局紙」という用紙とイメージとの相性もぴったり。デジタル写真特有のモノとしての軽さがないことも大きな魅力です。本展では、大小様々なサイズのカラー作品約40点をグリッド状にして展示いたします。

今回の東日本大震災により、私たちが普段当たり前と考えている社会経済システムが大きな自然の営みの中では無力であることを思い知らされました。奇しくも彼の「取り残された記憶」の作品群は今回地震にあった地域の「写真に残された記憶」となり、震災の記憶と深く結びつくことになりました。本作は、いつまでも人間が自然の大きな営みの中で生かされている事実を思い起こすきっかけとなり続けるでしょう。「取り残された記憶」は、日本では珍しいカラーによる抽象的なドキュメント作品です。この機会に多くの人にご覧いただきたく思います。

なお本展での作品売り上げの一部は東日本大地震被害者支援のために日本赤十字社に寄付されます。

以上



取り残された記憶


近年の経済不振により、日本国内でも富裕層と貧困層の格差が開きだしている。今後、この中間層にいる人々の数が減り、さらに二極化が進んでいくという。

時代の変化に合わせ発展していく都心部の街。それとは対照的に、年々若者の数が減り、かつての活気を取り戻す事が難しくなりつつある小さな町が地方にはいくつも点在している。否が応でも老いていく人間、衰退していく町、都会の利便性からは一線も二線も画されていく生活。そこで暮らす人々が不幸だとは思わないが、それらの町からは、どことなく物悲しい雰囲気を感じてしまう。

撮影の対象に選んだのは、それら小さな町の小さな景色。

住宅、店舗、倉庫、工場跡、など。鑑賞することを目的に造られたものではない。あくまでも、その町の生活の一部。時間の経過による町の衰退と共に老朽化していったもの。これらの被写体に向き合う時、そこでの生活の難しさを感じながらも、グラフィカルな美しさを感じ、撮影を続けてきた。

これは地方の小さな町の記憶。町や人の生活が、時間の経過により老いていく中で、私に見せてくれた小さな景色。そのドキュメンタリーである。

下元 直樹 (しももと・なおき)


プロフィール

1980年 宮城県仙台市生まれ。
2000年 札幌デザイナー学院 写真学科(現 札幌ビジュアルアーツ)卒業。
フォトスタジオ21でカメラアシスタントを経験、写真家として勤務。
2010年 スタジオ玄 フォトグラファーとして勤務中。
2010年 写真展“Imperfect Vision”にセレクションされる。
2010年 広尾アートフォトマーケットで作品展示。