Blitz Gallery updated 2017-10-30

Past Exhibition

テリ・ワイフェンバック 
「Between Maple and Chestnut 」

2012年 5月23日(水)~ 7月21日(土)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 日・月曜日 / 入場無料 



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(C) Terri Weifenbach /RAM

米国人写真家テリ・ワイフェンバックの新作写真展「Between Maple and Chestnut」です。なお同名写真集が2012年5月にNazraeli Pressから限定1000部刊行されます。

彼女は日常にある何気ない自然風景のカラー作品で知られる写真家です。ピンボケ画面の中にシャープにピントがあった部分が存在する写真が特徴。夢の中のような瞑想感が漂う明るい作品には根強い人気があります。

本作タイトルに含まれる「メイプル」と「チェスナット」の名前が冠されたストリートは、かつて米国全土で見られたありふれた光景でした。それは新しい生活を始める中流アメリカ人の郊外生活の象徴でもありました。しかし、21世紀の現在、かつての田舎風の家に、木々が生い茂り、緑の芝の庭が広がるような郊外シーンはほとんど見られなくなったそうです。90年代以降、新自由主義的な経済が浸透し、中間層が急激に没落していった一方で、古い不動産が修繕されて状況は様変わりしたのです。本作にワイフェンバックが取り組んだきっかけは、彼女が友人の新しい家を探している途中に行き止まりの道に迷い込んだことでした。そこは自動車が通ることもなく、外の世界の影響から完全に隔たれた孤島のような場所で、50年代の郊外の雰囲気や歴史を残していたのです。彼女は古き良き時代の気分を感じるその地を約1年半に渡って撮影します。やがて住民たちは年老いたかつて中間層世代ではなく、若い富裕層家族に移り変わっていることを発見します。
ワイフェンバックが今回撮影した新しい「メイプル」と「チェスナット」は、裕福な若い世代が住む場所に変わっていました。しかしこれは変化の断片でしかありません。いま全米では、かつて中間層が住んでいた場所で様々な変化が起きているのです。本作で、彼女はただ古き良き時代の残り香を現在に紡ぎだしたのではりません。テーマに取り上げているのは、中間層の没落によりアメリカが何を失ったかを問うこと。彼女は、一種の希望である純真さをなくしたと述べています。それは、誰でも成功のチャンスがあるというアメリカン・ドリームがもはや存在しないという意味なのでしょう。本作のような光り輝く、美しい郊外は、いまや普通の情景ではないのです。何気なく見えるシーンの背景に、アメリカ社会の変化をとらえた作家の冷徹なリアリストの視点があるのです。

本展では、「Between Maple and Chestnut」からカラー作品約16点が展示。会場の一部では昨年刊行された写真集「Some Insects」からカラー4点も同時展示されます。会場では世界に先駆けて写真集も販売予定です。

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(C) Terri Weifenbach /RAM

テリー・ワイフェンバック(Terri Weifenbach)・プロフィール

1957年ニューヨーク市生まれ。現在、ワシントンDC.に在住。メリーランド大学で絵画を学ぶが、30年以上に渡り写真家として活躍。またココーラン・アート・デザイン大学で教鞭を執っています。
写真集は「In your dreams」(1997年)、「Hunter Green」(2000年)、「Lana」(2002年)、ジョン・ゴセージとの共著「Snake Eyes」 (2002年)があります。初期作はレア・フォトブックとしてコレクターズ・アイテムになっています。作品はクリエイティブ・フォトグラフィー・センター(アリゾナ)、サンタバーバラ美術館などの世界中の美術館でコレクションされています。