Blitz Gallery updated 2017-04-12

Past Exhibition

横木 安良夫 写真展
『Day by Day』
( デイ ・ バイ ・ デイ )
2015年10月2日(金)~10月28日(水)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 日・月曜日 / 入場無料

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“Yokosuka, 1969” ⓒ Alao Yokogi

現在コマーシャル、エディトリアル写真および映像分野で活躍する横木安良夫(よこぎ・あらお)の写真展です。
当ギャラリーでは「Glance of lens (レンズの一瞥)」以来4年ぶりの個展になります。本展は2006年に発表された「Teach Your Children (ティーチ・ユア・チルドレン)1967-1975 あの日の彼 あの日の彼女」の続編にあたります。同作は、当時の若者文化をコミュニティーの内側から撮影した団塊世代の青春グラフィティーとして絶賛されました。前回は学生時代から写真家キャリアを開始した時期までの作品でしたが、今回は1975年にアシスタントを経て写真家として独立した以降の70~80年代までの作品が中心となります。

横木は、学生時代からアメリカ文化の影響を受けた当時の若者が、素直に"カッコいい"と感じるシーンを一貫して撮影しています。彼は戦後生まれの第1世代であり、前世代の写真家のように輸入文化の影響による日本文化のアイデンティティー喪失のような危機感を強くは持っていません。本作では、彼は日本だけではなく、ハワイ、香港、米国西海岸などにも広げて同じスタンスで撮影しています。実際のところ、アメリカ文化を無条件に受け入れたものの、日本文化が消えてしまうわけではありません。それらは排斥しあったり、融合したり、併存したり、様々な形態を生み出しているのです。本展では、輸入文化の原点の地である海外での写真と、それらの影響を受けつつも独自文化が併存している日本のシーンを対比させ、戦後日本の奇妙な混血文化の最前線を提示しています。そして21世紀のいま改めてこの作品を提示するのは、現代日本でもその状況は全く変わってないことを示すためです。私たちはそんなシーンに違和感すら感じなくなっている事実に気付かされるのです。

本展は1985~1986年にかけて新宿ニコン・サロンなどで展示された一連の作品群から約20点が展示されます。最近の横木の写真展では、展示作品はすべてインクジェットによるデジタル・プリントで制作されています。しかし今回は全作が当時に本人の手によりプリントされたアナログ銀塩写真になります。また前作「Teach Your Children(ティーチ・ユア・チルドレン)」シリーズから、代表作の貴重なヴィンテージ・プリントも一部展示予定です。本展タイトルの「Day by Day」は1985年に行われた初個展のタイトル。今回、横木のデビュー作が、約30年ぶりに蘇ります。

Day by Day                            

ぼくの父はアメリカ人、母は日本人だ。ぼくは混血児ということになる。もちろん文化的な話であって、実の父母は日本人だ。
通っていた幼稚園は、大正時代に日本に渡ってきたルーテル派の、筋金入り女宣教師、エーネ・パーラスが経営をしていた。戦後再来日し兵舎を改造した天井の高い木造の園舎、そこにはアメリカから寄付されたピカピカの玩具が溢れていた。そこでぼくはクリスマスの降誕劇を5歳でヨセフ、6歳では博士(3賢人)を演じ「私は乳香をさしあげます」というセリフまで言った。
小学校に入る頃、家にテレビがやってきた。毎日のようにアメリカのホームドラマが放送されブラウン管にかじりつき、アメリカ的民主主義のプロパガンダに洗脳された。
小学校4年が60年安保だった。ニュース報じられる安保反対のデモ。樺美智子の死が記憶に残り、初めてアメリカは正義ではないと知った。
高校生の時ブラスバンド部に入る。毎日アメリカのマーチ王スーザの行進曲を演奏した。「星条旗よ永遠なれ」「忠誠」「エルキャピタン」などなど。そんな時ケネディ暗殺が飛び込んできた。物質文明の王者アメリカは恐ろしい国に思えた。
大学では写真を学ぶ。時は泥沼のベトナム戦争真っ最中。反戦はあたりまえ。世界中で学生が立ち上がった。ぼくはデモに参加し安保反対を叫び、そして写真を撮った。
その頃アメリカの違う側面に出会っていた。それはかつてプロパガンダされたアメリカ精神ではなく、そこから生まれた、いやその闇から産み落とされた、ブルース、ジャズ、フォーク、ロックといった音楽で象徴されるようなアメリカ深部から生まれた文化とエネルギーに惹かれてゆく。
ぼくは本格的に写真を撮り始めていた。ぼくの記憶のなかのアメリカ的風景と、目の前の日本の風景とのミックス。まさに写真を撮ることは、自分の混血性を実証することだった。撮っている時たしかに「カッコイイ」という表現を使っていた。それは木村伊兵衛のいう「粋だね」に近いかもしれない。それは決して美しいだけではない。モダンでもない。日本的情緒とアメリカ的ドライさがミックスしたものだ。
写真は誕生した時から、何も産み出してはいない。新たなものを創造することもない。さまざまな実在にレンズを向け、シャッターを切る。それは単なるサンプリング、本物の顔をしたイリュージョンだ。混血児であるぼくにとって写真ほど、気分良くその本質を具現できるメディアはない。

横木安良夫

横木安良夫プロフィール
 (よこぎ・あらお / ALAO YOKOGI)

1949年 千葉県市川市生まれ 
1971年 日本大学芸術学部写真学科卒 
1975年 アシスタントをへてフリー。
エディトリアル、広告、ファッション、NUDE、ドキュメンタリーなど、さまざまな方面の仕事をはじめる。
1998年 文筆活動を開始する。
2009年  テレビ朝日「世界の街道をゆく」のムービーとスティールを担当。

著 作 リ ス ト
1999年 写真と文の本「サイゴンの昼下がり」 新潮社
2003年 小説「「熱を食む、裸の果実」 講談社
2004年 ノンフィクション「ロバート・キャパ最期の日」 東京書籍
2004年 「デジで本」 翔泳社
2005年 「M7.3 子供たちの見たもの」 宙出版
2006年 写真集「あの日の彼、あの日の彼女 1967-1975」 アスコム
2007年  写文集「ベトナム GX トラベラー」 アスコム
2008年 文庫「横木安良夫流スナップショット」 エイ出版社 
2009年 「Glance of Lens Vol.1 Vladivostok」 Zine 私家版
2009年 「Glance of Lens Vol.2 Girls in Motion」 Zine 私家版

写 真 展 
1985年12月 「Day by Day」 SHINJUKU NIKON SALON
1986年3月   「いつか上海」 TOKYO DESIGNERS SPACE PHOTOGALLERY STUDIO EBIS
1986年4月  「AMERICAN HEADS」 SHINJUKU NIKON SALON
1993年4月  「TWILIGHT TWIST POLAROID」 PORALOID GALLERY
1996年3月  「越南女」 HANAE MORI OPEN GALLERY
1996年4月  「TWILIGHT TWIST2 」HANAE MORI OPEN GALLERY
1996年5月  「10000W NUDE 」POLAROID GALLERY TORANOMON
1998年10月  「風が流れている」 POLAROID GALLERY TORANOMON
2003年3月  「時空越南」 全国キヤノンサロン 
2003年5月  「サイゴンの昼下がり 94-03」東京写真文化館
2003年11月  「北へ、北へ Forgotten Vietnam」 品川CanonSタワー
2004年9月  「ロバート・キャパ最期の土地」 デイズ・フォト・ギャラリー
2005年7月  「Summer Surf Tales」(グループ展) アート・フォト・サイト・ギャラリー
2006年1月 「Teach Your Children 1967 - 1975」アート・フォト・サイト・ギャラリー
2006年5月 「Shibuya Now and Then」~Daydream Believer~ 渋谷PARCO ロゴスギャラリー 
2006年12月 TEACH YOUR CHILDREN 1967-1975 「あの日の彼 あの日の彼女」 渋谷PARCOロゴスギャラリー
2007年7月  「GXトラベラー ベトナム・ニッポン」 Gallley Bauhaus
2008年5月  「GLANCE OF LENS~レンズの一瞥~」 ポートレート・ギャラリー  
2011年3月  「GLANCE OF LENS 2011 ~レンズの一瞥~」 ブリッツ・ギャラリー  
2011年9月  「GLANCE OF LENS ~レンズの一瞥~」 キヤノンギャラリーS
2014年8月  「GLANCE OF LENS 2014 ~生きている瞬間~」 キャノンギャラリー