テリ・ワイフェンバック（Terri Weifenbach）は、日常にある何気ない自然風景のカラー作品で知られる写真家です。ピンボケ画面の中にシャープにピントがあった部分が存在する写真が特徴。夢の中にいるような、瞑想感が漂う光り輝く作品には根強い人気があります。

本展のタイトル「Cloud Physics」（雲物理学）は気象学・気候学と密接な関係があり、気候変動の研究と切り離すことができない大気物理学のこと。本作でワイフェンバックは自らの自然をテーマにした作品スタイルを、大気の中で起こる様々な気象現象と関連付けて探求しています。雲と植物・生物との複雑な関係を表現するために、世界のさまざまな場所で、あらゆる季節と時間帯に撮影を敢行。その後、何千枚もの写真と向き合いフォトブックの編集作業が行われました。フォトブック巻末には全作品の、撮影場所、撮影日、降水量、気温、湿度、風速、海面気圧の詳細なデータを記載。彼女はフォトブック刊行に寄せて「私が言葉ではなく、写真で表現したいのは、気候変動によって失われるものは美しさだということです」と記しています。本作では、いま世界規模で起きている様々な気候変動問題が意識されているのです。フォトブックは、フランスAtelier EXBと米国The Ice Plantから刊行、写真史家のリュス・ルバール (Luce Lebart)がテキストを寄せています。

本展では、フォトブック「Cloud Physics」収録作から、デジタル・アーカイヴァル・プリント作品23点を展示販売いたします。ギャラリーの展示レイアウトも彼女がディレクションしています。また同時に、iPhoneにより撮影された小サイズの新作約16点も紹介いたします。フランス郊外のブルゴーニュ地方で撮影された美しい風景のスナップ作品です。